下肢や上肢に人工関節・人工骨頭の置換手術を受けている場合、それぞれの障害認定基準に該当していれば、障害年金を請求できます。総合的な判断が必要ですが、人工関節・人工骨頭の手術をしている場合は少なくとも、障害厚生年金3級に該当する可能性が高いと思われます。
但し、術後の症状が悪い場合などは、更に上位等級に認定されます。
この「障害厚生年金」とは、下肢または上肢の関節に痛みを感じた。または、違和感などの症状で初めて病院を受診した日(初診日)に厚生年金に加入していた方に支給される年金です。
初診日に国民年金に加入していた方は、「障害基礎年金」が支給されますが、こちらには1級と2級しかないので、3級がありません。
病気やケガなどによって日常生活や仕事に支障が出ている方が受給できる年金です。申請は原則20歳から65歳未満までに行う必要があります。初診日要件、年金の納付要件や障害の程度などの受給できる条件を満たしていれば、受給することができます。
障害年金の等級は1~3級ですが、1級が一番重い障害で以下2級、3級となります。初診日(病気のために初めて病院に行った日)に加入していた制度によって年金を受給できる等級が違ってきます。
※初診日に国民年金に加入していた場合は(障害基礎年金)1級もしくは2級のみしかありません。(障害基礎年金には3級はありません。)
※初診日に厚生年金に加入していた場合(障害厚生年金)1級、2級、3級、もしくは障害手当金(障害厚生年金には3級及び障害手当金があります。)
まずは、ご自身で障害基礎年金になるのか、もしくは障害厚生年金になるのかを判断してください。
障害年金は、(1)初診日要件(2)保険料納付要件(3)障害の程度が認定基準に該当すること、3つの要件とも満たさなければ受給できません。以下で、順にご説明します。
上肢や下肢の関節が痛くなった又は、違和感があるなどで、初めて病院を受診した日、または初めて病名を医師から告げられた日を「初診日」と言います。
受診状況等証明書にて証明する必要があります。
初診日までに一定以上の年金保険料を納めていることが2つ目の条件です。(保険料納付要件と言います。)
初診日の時に、国民年金、厚生年金、共済年金に加入していた方で、
(1)初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の2/3以上の期間について、保険料が納付または免除されていること(原則)
または
(2)初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと(特例)
上記(1)か(2)のいずれかを満たしていればOKです。初診日の時点で20歳未満であった方は保険料納付要件については問われません。ただし年間所得が一定以上であると、支給額に制限がかかる場合があります。
障害の程度が認定基準に該当するかどうかです。
「下肢」 認定基準について
下肢の障害については、次のとおり認定する。
下肢の3大関節中1関節以上に人工骨頭又は人工関節をそう入置換し たものや両下肢の3大関節中1関節以上にそれぞれ人工骨頭又は人工関節をそう入置換したものは3級と認定する。ただし、そう入置換してもなお、一下肢については「一下肢の用を全く廃したもの」程度以上に該当するとき、両下肢については「両下肢の機能に相当程度の障害を残すもの」程度以上に該当するときは、さらに上位等級に認定する。
「上肢」 認定基準について
上肢の障害については、次のとおり認定する。
上肢の3大関節中1関節以上に人工骨頭又は人工関節をそう入置換したものや両上肢の3大関節中1関節以上にそれぞれ人工骨頭又は人工関節をそう入置換したものは3級と認定する。ただし、そう入置換してもなお、一上肢については「一上肢の用を全く廃したもの」程度以上に該当するとき、両上肢については「両上肢の機能に相当程度の障害を残すもの」程度以上に該当するときは、さらに上位等級に認定する。
人工関節、人工骨頭の状態のみである場合、障害等級は3級になることが多いので、初診日に国民年金に加入していた場合、障害基礎年金は1級、2級しかありません。しかし、手術後も下記の様な状態である場合は受給できる場合もあります。
1. 「1つの脚の股関節、膝関節、足関節の3つの関節のうち、2つ以上が、通常の2分の1以下しか動かすことができず、かつ、その脚の筋力が半減している場合」や「両方の脚について、股関節、膝関節、足関節の3つの関節のうち、1つ以上が、通常の2分の1以下しか動かすことができず、かつ、その脚の筋力が半減している場合」などがあります。
2. 社会的治癒後の初診日が厚生年金の場合は、3級でも障害年金を申請できる可能性があります。
次に、請求者の現在の年齢が65歳以上の場合も受給できる可能性があります。
条件をすべて満たしていても、老齢年金を受給している場合は老齢年金との併給はできません。
ただし、65歳以上であっても、初診日が65歳未満であるなどの場合は、例外的に障害年金を受給できる可能性があります。
ここまで、障害年金が申請できる要件についてご説明してきましたが、ここからは障害年金を受給するための具体的な手続きについての説明をしていきます。
1. 受診状況等証明書の取得
2. 診断書の取得
3. 病歴就労状況等申立書の記載(この書類は請求者が記載する書類です。)
「受診状況等証明書」とは、下肢や上肢の症状で初めて病院を受診した日(初診日)を証明するための書類です。障害年金の受給資格や納付状況を確認するために、かならず初診日を証明しなければなりません。初診日に受診していた病院で作成を依頼してください。(診断書を書いてもらう病院が初診病院である場合は必要ありません。)
よくあるケ-スでは、
日常生活では、就労をしているので、人工骨頭や人工関節で障害年金を受給できると知らなかった。
初診の病院は覚えているが、もうすでに20年以上経過している。
など、よくあるケ-スです。
病院でのカルテの保管期間は5年ですので破棄されている。また、病院が廃院になっていて受診状況等証明書がとれないことがあります。このような場合は、病院の診察券や生命保険等の給付申請時の診断書、診療報酬明細書、領収書、また第三者証明などの資料で初診日を証明できる場合があります。
初診日から1年6ヶ月経過した日または、初診日から1年6ヶ月以内に、人工関節や人工骨頭施術日がある場合はその施術日(障害認定日と言います。)に認定基準に該当する場合は、障害年金をさかのぼって請求できる可能性(遡及請求)があるので、診断書は、障害認定日から3か月以内の症状のものと現在の症状の2通の診断書を書いてもらいましょう。
1. 人工骨頭・人工関節の装着の状態欄
複数の箇所に人工骨頭または人工関節を入れている場合は、そのことがわかるように記載してもらいましょう。
2. 関節可動域及び筋力の項目
2級に該当するためには、関節の可動域(動く範囲)と脚の筋力が半減していることが必要です。関節の可動域や脚の筋力に制限が生じている内容を記載してもらいましょう。
3. 日常生活のおける動作の障害の程度の項目
片足で立つことができるか、正座やあぐらができるかなど、動作についての支障を、正確に記載してもらいましょう。
4. 補助具使用状況の項目
杖や歩行器などの使用の有無について記載も非常に重要です。
「使用状況を詳しく記入してください」の欄には、例えば、杖を屋内でも使用している場合、屋内でも杖の使用が必要なことがわかるように詳しい記載をしましょう。
5. その他の精神・身体の障害の状態の項目
人工骨頭、人工関節以外の精神や身体の不調について記載します。
6. 現症時の日常生活活動能力及び労働能力の項目
補助用具なし、介助なしの状態で現在日常生活に支障がある内容や仕事に支障がある内容を医師に伝えましょう。
病歴・就労状況等申立書とは、発病したときから現在までの経過を3~5年に区切って申告するための書類です。受診状況等証明書や診断書は病院や医師に記載してもらう書類ですが、この書類は請求者が作成する書類です。いままでの病歴や日常生活、就労状況について請求者が申告します。下記をご参考にして頂き、具体的に記入してください。
・どのくらいの期間、どのくらいの頻度で受診したか
・入院した期間やどんな治療をして、改善したかどうか
・医師から言われていたこと
・日常生活状況
具体的にどんな症状があって、どのように困っていたか。
・就労状況
(週に何日、1日何時間働いているか。仕事中や仕事後に体調に変化があれば記入する。病気のために生じている仕事の制限や職場での配慮があれば記入する。
・受診していなかった理由
(自覚症状がなかった、経済的に行けなかった等)
・自覚症状の程度
(例:体重が減ってきた、疲れやすくなった等)
・日常生活状況
(階段を上ることがつらくなった。等)
・就労状況
(病気によって、仕事に支障をきたしてきたこと等)
岸和田・泉州障害年金相談事務所で実際に、障害年金を既に受給した方を一部ご紹介しております。
これまで、障害や病気(うつ病、統合失調、知的障害、がん、難病、脳疾患、糖尿病、手足・人工関節、呼吸器疾患など)でご本人も、ご家族も大変ご苦労をされてこられましたが、障害年金を受給してからは 大きく生活を変えておられます。
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(相談内容) 5年以上前より、左足付け根付近から殿部にかけて痛みを感じる様になる。その後少しずつ痛みが増してきて、足を引きずって歩くようになる。 近医の整形外科クリニックを受診するが、湿布薬とリハビリの処置を行い経過を診ることになる。診断と治療方法に疑問を感じたので、受診は1回のみで中止する。 座っているのも痛くなってきたので、2件目の病院を受診する。レ...
年齢:40代 / 性別:男性 / 受給等級:3級/年金額:約230万円 / 遡及額: